事業規模やケースで最適な節税は変わる!各種節税制度と税理士活用時のポイント

2017年7月27日
事業規模やケースで最適な節税は変わる!各種節税制度と税理士活用時のポイント

経営者にとって節税は大切な経営のポイントの1つです。しかし、経営者自らが各種税制を100%理解して最適な制度を適用することを判断するのは難しいでしょう。そこで、起業したての経営者や中小企業経営者そして大企業の経営者・税務担当者などが理解しておきたい節税のポイントについてご紹介します。また、税の専門家である税理士事務所に相談する場合のポイントについてもあわせてお伝えします。

利用できる節税制度はケースによって異なる

事業経営にあたっては、ヒト・モノ・カネそして市場や顧客の動向などのさまざまな要素を考慮して適切な経営判断をする必要がありますが、その中の1つとして税金があります。正しく税額計算を行って適正な納税をすることが重要ですが、合法的な節税を行い、税負担を減らすことも大切です。

そのため節税余地があれば積極的に実行したいと考える経営者も多いでしょう。節税の方法は多種多様で、事業規模や経営状況によって最適な節税方法は変わってきます。また、起業したばかりの個人事業主向けの節税方法もあれば、中小企業向けや大企業向けの節税方法もあります。

さらには、普段から実行することで節税につながるケースもあれば、利益が生じた場合だけ効果があるもの、損失が生じた場合のみ有効な節税方法も存在します(※1)。経営者は、税理士事務所などの専門家を上手く活用しながら、状況に応じた節税を実行するように心がける必要があるでしょう。

個人事業主が利用できる所得税の節税制度

個人事業主向けの節税のポイントは3つあります。

1つ目は青色申告をすることです(※2)。個人事業主として起業する場合は、個人事業主の開業届と合わせて、最初から青色申告承認申請書を提出して適用を受けることをおすすめします。青色申告者になることによる主なメリットとしては、65万円の所得控除が認められる青色申告特別控除や、家族などへの給与やボーナスが必要経費として認められる青色事業専従者給与、損失発生翌年から3年間認められる損失の繰越控除、そして一定の上限はありますが30万円未満の資産を取得時に全額必要経費計上できる少額減価償却資産などがあげられます(※2)。

2つ目は経費を漏れなく計上することです(※2)。必要経費の計上は事業所得の圧縮につながり所得税などの節税になります。個人事業主の場合、交際費は全額必要経費にできます。また、事業に関連する書籍代などの購入も必要経費となるでしょう(※2)。注意点としては、売上に貢献する支出だけを計上し、関係ない支出は計上しないことです(※2)。

3つ目のポイントは法人成りです。所得税は所得が増えると税率が上がる超過累進税率が適用されますが、法人は比例税率となります(※3)。どのタイミングで法人成りするのが節税につながるかはケースバイケースですので、税理士に相談することをおすすめします。

中小企業が利用できる節税制度とは?

続いて中小企業向けの節税です。3つの切り口に分けて考えるとよいでしょう。

1つ目は、所得税と法人税のバランスです。社長がオーナーである中小企業は、社長の役員報酬にかかる所得税と会社の法人税のバランスをとることが大切です(※3)。法人成りでもご紹介したとおり、所得税と法人税では適用税率が違いますので、適切に役員報酬額を決めることが重要になります。

2つ目は法人所得を圧縮できる中小企業向けの制度の活用です。法人税には中小企業だけに認められる節税制度がいくつかあります。これらを積極的に活用することが効果的な節税対策になります。主なものとしては、貸倒引当金の計上や30万円未満の少額減価償却資産の全額損金計上、生産性向上に役立つ設備や一定の研究開発設備などの特別償却などがあげられます(※3)。

3つ目は損失が生じたケースでの節税です。個人事業の場合は、3年間しか損失を繰り越すことができませんが、法人の場合は、平成29年度は9年間、平成30年度以降は10年間繰り越すことが認められています(※3)。

大企業でも節税できる制度がある

最後は大企業向けの節税です。法人税には中小企業だけが利用できる節税制度が数多くありますので、規模の大きな会社の経営者は節税余地がほとんどないと考えているかもしれませんが、大企業でもできる節税はあります。大企業の場合は、普段から行っておくことで節税につながるものが多いという特徴があります。

まず、役員の報酬を確実に損金計上する方法です。月々の報酬に関しては定期同額給与、ボーナスに関しては事前確定届出給与を活用することが節税につながります(※1)。いずれも事前に届出が必要になりますので注意しましょう。

次に、資産の圧縮です。不要な資産を廃棄、除却することでその廃棄損などが損金として認められます(※1)。バランスシートの圧縮にもつながりますのでおすすめです。さらに、交際費の計上もポイントになります。大企業であっても、飲食接待費の50%は損金として認められることを知っておきましょう(※1)。

最後は、損失が生じた場合の損失の繰越控除です。事業年度によって9年間か10年間の繰越が認められます(※1)。中小企業と比較すると一定の制限がありますが、損失の繰越も代表的な節税方法です。

税理士への相談においては経営者の考え方などを伝えることが大切

事業の状況や今後の経営方針などによって適している節税方法は変わってくる可能性があります。事業に合った節税をしたい場合は、経営者自らや税務担当者が税制を勉強して対応する方法もありますが、すべての制度を自力で理解するのは効率的とはいえないでしょう。専門家である税理士に相談することも有効な選択肢です。税理士事務所などに相談をする場合のポイントは、単に節税したいという意思を伝えるだけでなく、経営者自身の考え方や経営実態を正確に伝えることです。

税理士は、経営者の考え方や経営実態を理解することによって、より効果的な節税を提案できるようになる可能性があります(※3)。さまざまな節税方法をどのように利用すべきか悩んだ場合は、税理士事務所に相談することをおすすめします。

※1法人税の節税の全てが理解できる19のテクニック解説:
http://hoken-kyokasho.com/houjinzeisetsuzei
※2個人事業主の節税で大切なのは2つ、これだけやれば税金で損をしない:
https://www.uchitax.com/2016/04/18/sole-proprietorship/
※3伸びる中小企業の節税対策5つのテクニック:
http://subaru-juku.com/tax-reduction-strategy-3231

ライタープロフィール
【hiro】
電器メーカー在職中、経理・財務分野の第一線にて活躍、2001年から5年間、経理・財務責任者として海外子会社へ出向。2009年にファイナンシャルプランナーとして独立し、講師業・執筆業などを中心に幅広い分野で活動している。得意なライティング分野は、金融資産および不動産投資分野、所得税や相続税などの税金分野、ビジネススキルの分野など。講師経験を活かしたわかりやすい文章が特徴。
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