マンション売却時にかかる費用は節約できる?節約してデメリットはないの?

2018年2月2日
マンション売却

マンションを売却しようとする際、まずは売却価格が気になるという人は多いでしょう。しかし、売却価格だけで実際の収支を予測することはできません。マンション売却時にはさまざまな費用が必要となるため、金額をきちんと把握しておくことが必要です。そこで、マンション売却時に必要となる費用について見ていきましょう。また、費用のなかでも金額の大きい仲介手数料については、その節約の可否についても解説していきます。

マンション売却時にかかるさまざまな費用

マンションを売却する際に必要となる費用として、まず「印紙税」があります。マンションの売買契約書は印紙税法における課税文書とされているため、売買契約書に収入印紙を貼付して納税しなければなりません。税率は売買金額によって異なり、たとえば売買金額が1千万円を超え5千万円以下の場合は2万円、5千万円を超え1億円以下の場合は6万円と定められています。ただし、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成される契約書には軽減税率が適用され、税額は半分となります。(※1)

次に、住宅ローンが残っている場合には「抵当権抹消登記」を行うための費用が必要となります。住宅ローンの担保のためにマンションに設定されている抵当権は、買主への引き渡し時に抹消しなければなりません。この手続きを行うために必要な登録免許税や司法書士への報酬を見込んでおきましょう。売却価格などによって金額は異なりますが、8千円から3万円程度となります。(※2)

また、売却金額を住宅ローンの残債の返済に充てて一括繰上げ返済する際、金融機関に返済手数料を支払う必要があります。「一括繰上げ返済手数料」の額は銀行によって異なりますが、5千円から3万円程度です。(※3)(※4)

さらに必要となるのが、マンションの売却を依頼する不動産会社に支払う「仲介手数料」です。依頼を受けた不動産会社は、物件の広告をして買主を探し、買主との価格交渉のアドバイスなどをしてくれます。また、安全で確実な取引ができるよう契約内容を精査し、手続きを進めるのも重要な仕事です。仲介手数料はこれらの働きに対する対価として必要となります。仲介手数料の金額は不動産会社との合意によって決まりますので、他の費用とは異なり、節約できる可能性のあるものです。

仲介手数料の相場はどれくらい?

仲介手数料は、マンションの売主と不動産会社との間で締結される媒介契約に基づいて支払われるものです。したがって、仲介手数料の額も媒介契約によって定められます。ただし、仲介手数料の額には宅地建物取引業法の上限規制があります。宅建業法を受けて具体的に規制内容を定めているのが、「報酬規程」と呼ばれる国土交通省の告示です。(※5)

報酬規程では、売買金額の大きさに応じて3つの区分に分けて仲介手数料の上限を定めています。具体的には「200万円以下の場合はその5パーセント以内」、「200万円を超えて400万円以下の場合には4パーセント以内」、「400万円を超える場合は3パーセント以内」というのが上限です。したがって、売買金額が400万円を超える場合には、その金額を3つの区分に分けたうえで計算することになり面倒です。しかし、「売買代金×3パーセント+6万円」という速算式があり、通常はこの式を使って計算されます。

たとえば、売買代金が3千万円の場合には「3千万円×3パーセント+6万円=96万円」が仲介手数料の上限です。なお、仲介手数料には別途消費税がかかり、不動産会社はこの上限額に消費税を加えた額まで受け取ることができます。報酬規程はあくまでも仲介手数料の上限を定めたものです。したがって、不動産会社はこの上限の枠のなかで価格競争をすることができます。

しかし、不動産仲介会社としては仲介手数料がほぼ唯一の収入源であるため、容易に安くできないのも事実です。また、マンション売却のために広告費などの経費をどんなに使っても、売買契約が成立しなければ不動産会社は報酬を受け取ることができません。これらの事情から、多くの不動産会社では報酬規程の上限額をそのまま仲介手数料の額として設定しており、これが相場となっています。

なぜ仲介手数料を安くできる不動産会社があるのか?

多くの不動産会社が仲介手数料を報酬規程の上限額で設定しているなかで、仲介手数料を安くしている不動産会社も一部にはあります。なかでも目立つのは、「売主からの仲介手数料は無料」としている不動産会社です。不動産仲介では、売主から依頼を受けた不動産会社と買主から依頼を受けた不動産会社の2社が関わり、契約にいたるのが通常です。これらの会社は、それぞれ売主と買主から支払われる仲介手数料を収入としています。

ただ、売主から依頼を受けた不動産会社が自ら買主を見つけることができれば、この会社は売主と買主の双方から報酬上限の仲介手数料を受け取ることが可能です。これを両手取引と呼びます。「売主からの仲介手数料は無料」という会社は、両手取引によって買主から仲介手数料を受け取って収入を確保しつつ、売主を優遇しているのです。

不動産仲介会社にとって売主からの依頼を集められるかどうかは非常に重要です。売主から依頼を受けた会社を「元付会社」と呼びますが、元付会社になれれば収入を確保できる可能性は高まります。物件を預かっていれば、いずれは買主が現れて契約にいたることが多いからです。

これに対し、買主から不動産購入の依頼を受けても収入を確実に見込むことはできません。多くの買主は複数の不動産会社に購入を依頼していることが多く、自社で取引してくれるとは限らないからです。そのため、多くの不動産仲介会社は売主からの依頼を受けることに注力しています。売主の仲介手数料を無料にするのもその戦略の一つで、両手取引での収入を半減させても売主集めを優先しようという判断の下で行われているのです。

もっとも、常に両手取引を実現できるとは限らず、他の不動産会社が連れてきた買主との契約になる場合もあります。その場合は買主からの仲介手数料を得ることができなくなるため、売主からの仲介手数料を無料にするとタダ働きになってしまいます。

したがって、仲介手数料を無料にはできず半額程度としているのが通常です。仲介手数料は売買金額3千万円で100万円程度が相場なので、これが無料や半額になればマンション売主にとってはありがたい話です。費用節約を重視するなら、このような不動産会社を探すのも一つの方法でしょう。

安さだけで不動産会社を選んではダメ!

仲介手数料が安いことはありがたいことですが、安さだけで不動産会社を選べば良いわけではないことに注意しましょう。仲介手数料だけが安くなっても、トータルで見るとマイナスになる可能性もあるからです。まず、仲介手数料を節約しても売却価格が大幅に安くなってしまっては意味がありません。

たとえば、100万円の仲介手数料が無料になったとしても、売却価格が200万円安くなれば手元に残る金額は100万円減ることになるのです。売却価格は不動産会社の販売戦略や交渉力などによっても大きく変わってきます。実際にいくらで売れるのかが未確定の時点で、仲介手数料だけを比較してもあまり意味がないともいえるのです。売主の利益になるよう高値売却を進める姿勢と能力を持った会社に依頼をすれば、報酬上限の仲介手数料を支払っても大きなメリットが得られることもあります。

また、仲介手数料を無料にしている会社のなかには、両手取引にこだわるあまり、他の不動産会社が連れてきた買主からの申込みを何かと理由をつけて断るようなところもあります。販売機会を故意に逃がすのは売主の利益に反する行為ですが、残念ながら一部にはこのような会社もあるのが現実です。これらの点から、不動産会社を選ぶ際には仲介手数料の安さだけに目を奪われないことが大切だということがわかります。

最も優先すべきことは、十分な販売戦略と交渉能力を持ち、売主の利益を最優先する誠実さを持った会社を選ぶことです。それを見極めるために、複数の会社に価格査定を依頼していろいろな質問をぶつけてみましょう。優秀で誠実な会社であれば、きちんとした根拠に基づいて丁寧に回答してくれるはずです。そのような会社を複数選んだうえで、仲介手数料の額を参考にして最終選択をするなら問題ないでしょう。

費用の把握と慎重な不動産会社選びが成功のカギ!

費用を事前に把握しておけば、マンション売却に関する収支の見込みを立てることが可能です。買主からの価格交渉に対応する際に、自分で譲れないラインを決めておくこともできるでしょう。また、費用のなかで節約できる可能性があるのは仲介手数料です。

ただ、仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ぶべきではないことは意識しておく必要があります。不動産会社はマンション売却成功のカギを握る大切なパートナーです。適切な販売戦略と交渉能力を持ち、売主の利益を最優先してくれる不動産会社を選びましょう。その選択こそが結果的に最も良い費用の節約方法になるはずです。

※1.【国税庁】不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
※2.【日本司法書士会連合会】報酬アンケート結果一覧(2013年(平成25年)2月実施)
※3.【三菱東京UFJ銀行】借入後に必要な住宅ローン手数料
※4.【三井住友銀行】住宅ローン 繰上返済
※5.【国土交通省】宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号)

ライタープロフィール
Oizo
【Oizo】
資格系教育機関や不動産関連会社での勤務経験を経て独立。法律知識や就職対策指導経験、不動産実務やマネジメント経験などを背景に、就職・法律・不動産取引に関する専門的な記事に即時対応可能です。
独立後、事業として複数サイトの構築・運営も行っているため、SEO分野の動向も日々勉強中。ライターの仕事を通じて自分の関心分野の拡大を日々実感しています。
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