取りやすく役に立つ国家試験〜宅地建物取引士試験〜

2016年8月15日

日本には様々な資格試験があります。その中でも最難関の一つが国家資格試験です。「国家資格」とは国の法律に基づいて能力や知識が判定されるもので、合格者には免許が与えられます。資格試験には民間団体等が行う「民間資格」もあります。これも試験によって能力や知識が判定されますが、法律ではなく独自の審査基準に基づいており、「合格」はしても「免許」はありません。主な国家資格としては、弁護士、公認会計士、医師、看護師、建築士などが良く知られています。これらの資格は専門的教育を受け、さらに厳しい試験をくぐり抜けなければ合格できないものも多く、職業的な必要性ではなく、純粋な知的興味のもとに受験を楽しむような一般受験者向きではないと考えられています。

宅地建物取引士資格試験とは?

では、一般受験者でも挑戦できる国家資格はないのでしょうか。そんなことはありません。今回ここでは、宅地建物取引士(宅建士)の国家資格試験をお勧めします。「宅地建物取引士」とは、宅地建物取引士資格試験に合格し、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受け、かつ都道府県知事の「資格登録」と「認定書の交付」を受けた不動産取引のプロのことです。
このように書くと、取得が非常に難しい資格のようにも思えますが、その他の国家資格に比べると、一般受験者への門戸が大きく開かれています。さらに、試験内容が日常的な住環境に深く関わるテーマですので、レベルの高い一般常識試験という側面もあります。つまり、この資格試験は不動産のプロを目指す訳ではない一般社会人にとって、教養を高めるきっかけになると同時に、実用的でもある資格なのです。
試験は年に一回あります。年齢・性別・学歴・国籍などの制限は一切ありません。毎年20万人前後の受験者がおり、そのうち15%程度の合格者となっています。試験内容は、法律で7分野が定められており、内容的には大きく4つの分野にまとめることができます。1.権利関係、2.宅建業法、3.法令上の制限、4.その他の分野です。なお、受験料については一般的な語学試験と同程度で済みますので、経済的負担の軽さは他の国家資格の比ではありません。

試験内容について

出題される4分野の概要及び日常生活で役立つポイントについて紹介します。
1.権利関係
基本的な民法について学びます。モノを売り買いするときに必要な法律的根拠について押さえます。主なトピックは、意思表示、代理、時効、相続、物件の変動、危険負担、債権譲渡など。さらに、より不動産取引に近い法律として、不動産登記法、区分所有法、借地借家法などを押さえます。この内容は、日常生活の中で発生する様々な権利関係のトラブルを理解し、法律に基づいた解決に導くことに役に立ちます。
2.宅建業法
不動産取引を業務として行う場合、「宅地建物取引業法」(通称、宅建業法)によって、消費者保護の観点から様々な規制がなされます。ここでは、そのような取引行為に対する制限の法的根拠を学びます。主なトピックは、宅建業の要件、取引主任者の役割、取引にまつわる保証関係、業務上の規則、契約の種類、報酬額の制限、8種制限(クーリング・オフ制度、手付金、瑕疵担保責任、割賦販売契約の解除の制限など)、重要事項説明書、監督処分と罰則などです。この内容は、土地や建物を購入する際に問題となる、仲介を依頼する不動産業者の義務・責任及びその範囲がわかるようになるため、公正で自己に有利な取引の実現に役立ちます。
3.法令上の制限
土地と建物は様々な環境の中に存在します。ここでは、その外的環境によって制限される自己の権利の内容とその法的根拠を学びます。主なトピックは、都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、宅地造成等規制法、農地法、土地区画整理法などです。この内容は、家を建てたり、マンションを購入したりする際に問題となる、周辺環境との法的な調整のありかた、また行政が行う住環境に関する情報公開の意義と内容の理解に役に立ちます。
4.その他の分野
土地や建物の価格はどのように決められるのでしょうか。また、不動産取引ではどのような税制上の優遇措置が得られるでしょうか。ここでは、そのような不動産価格の決定プロセスと公的支援策の仕組み、及び税制の基本について学びます。主なトピックは、住宅金融支援機構、不動産鑑定評価の方法、不当景品類及び不当表示防止法、各種税法などです。この内容は、土地や建物の購入または投資を検討する際に問題となる、価格決定の仕組みと税制優遇の具体例についての理解が深まり、様々な制度を活用した有利な資産形成に役に立ちます。

まとめ

宅建士資格試験の学習環境は非常に充実しています。毎年20万人前後が挑戦する資格試験ですので、教育マーケットの対象としても魅力的で、様々な自習教材が販売され、各種の講座が開講されています。さらに、webサイトや、スマートフォン・アプリでの学習環境も充実してきていますので、自由時間に制限がある社会人でも学習が可能です。
合格のための必要時間は標準で300時間とも言われています。集中力と理解度によるものの、早ければ半年、遅くとも1年間みっちり学べば合格圏内に入ることができるでしょう。受験に関する情報は、ネット上で簡単に検索できますので、興味がわいたら今すぐに調べてみましょう。

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