「大学入学共通テスト」で受験はどう変わる?主な変更点や対策方法を解説!

2019年11月22日

大学入試の代名詞とも言えるセンター試験に代わって、新たに導入されることが決定した「大学入学共通テスト」。とはいえ、実施方針がなかなか定まらないために混乱している人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、大学入学共通テストの概要やセンター試験との違い、英語の民間試験導入が延期となった経緯などについて、まとめて解説します。今後、新たに起こる可能性のある変更点にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
※記事の情報は2019年11月時点のものです。

大学入学共通テストの基礎知識

読者の中には「そもそも大学入学共通テストとは何なのか?」という点がよくわからない人もいるかもしれません。そこでまずは、大学入学共通テストの概要や導入時期、試験結果の活用方法といった基本的な情報について解説します。

大学入学共通テストとは

大学入学共通テストとは、文部科学省が打ち出した「大学入試改革」の一環でセンター試験の後を継ぐことになった新しいテストのことです。共通テストはセンター試験に引き続き、独立行政法人大学入試センターが実施します。文部科学省としては、これまで重視されてきた「知識・技能」に加えて、「思考力・判断力・表現力」といった能力も共通テストで評価し、一層バランスの取れた人材を育成するのが狙いです。

今回の大学入試改革の背景には、変化の著しい社会環境の中でもしっかりと活躍できる人材を育成することが急務となっているという事情があります。たとえば、国内で進む少子高齢化や人口減少はAIの導入を加速させることは確実でしょう。また、国外に目を向けてみても、グローバル化や不安定な国際情勢への対応は難易度がより高くなるかもしれません。だからこそ、これまでよりも思考力や判断力、表現力といった力が必要になるのです。

大学入学共通テストの導入は影響範囲が大きいために話題として取り上げられやすいですが、日本の教育の方向性が大きく変わろうとしている以上、今後は入試以外にもさまざまな場面で学び方の変革が求められていくことが予想されています。

大学入学共通テストのスタート時期

大学入学共通テストは1月中旬の土曜日・日曜日を利用して実施される点はセンター試験と変わりません。初回は2021年1月16日(土)・17日(日)の2日間となる予定です。現在のスケジュール通りに進めば、2021年の1月に高校3年生または浪人生などの受験生である人たちが共通テストを最初に受験する対象者ということになります。ただし、2019年11月に英語の民間試験導入の延期が発表されたことを受けて、共通テスト自体の中止や延期を求める声が高まり、スムーズに実施までこぎ着けられるかどうかが不透明になっています。

大学入学共通テスト結果の活用方法

大学入学共通テストの結果はセンター試験と同じく志望校への出願時に活用されますが、受験する大学や利用する入試制度によって共通テストの重要度は変わってきます。国公立大学では大学入学共通テストを1次試験、各校で実施する個別の試験を2次試験と位置づけ、それぞれの合計点で合否を決めるのが基本方針です。したがって、国公立大学を受験する生徒にとっては共通テストが非常に重要となります。2019年1月に全国の大学を対象に文部科学省が実施した調査でも、9割以上の国公立大学が共通テストを活用すると回答しました。

一方、私立大学では現行の「センター試験利用入試」と同様の入試が予定され、6割以上の大学が共通テストの活用に前向きな回答をしています。センター試験利用入試とは、センター試験の結果で私立大学の受験が可能となる制度で、1回の受験で複数の大学へ出願できるのがメリットです(一部個別試験を組み合わせる場合もあります)。私立大学を志望する場合は、共通テストの重要度が受験生によって変わってくるでしょう。

大学入学共通テストとセンター試験の違い&対策方法

大学入学共通テストでは6教科30科目が扱われる点はセンター試験と変わりませんが、従来よりも思考力や判断力、表現力といった要素が加味された上で問題作成が行われることが予定されています。中でも、国語・数学・英語には内容に大きな変更点があるので、それぞれについてセンター試験との違いや対策方法を解説します。

国語

国語の試験問題で大きな変更があるのは記述式問題が導入される点です。これまで実施されてきたセンター試験では全問マーク式だった問題が具体的にどのように変更される予定なのかを確認していきましょう。

変更点

国語の問題では従来の大問で現代文2問、古文1問、漢文1問のマーク式という構成はそのままに、記述式問題のみを扱う1問を新たに追加し、大問数を4つから5つへと増やすのが主な変更点です。これに伴い、試験時間も80分から100分へと拡大されます。記述式の大問では3題の小問が出題され、それぞれ数十字で記述する形です。

評価方法はマーク式についてはこれまで通り200点満点、記述式の3題は各解答をa、a*、b、b*、cで評価した上で、最終的に大問全体としてA~Eの5段階評価が1つ決められることになります。a*(アスタリスク)はaにマイナス評価が付いていることを意味し、b*についても同様です。たとえば、小問1がa、小問2がb、小問3がa*の評価だった場合、全体評価は「段階B」といった結果となります。各大学は小問、大問のうちどちらの評価も活用可能です。

対策方法

大学入学共通テストの国語に対応するには、まずは記述式問題に慣れる必要が出てきます。実際の試験では与えられた資料や話の流れから必要な情報を読み取った上で、それらを簡潔にまとめなければなりません。これまでのセンター試験で問われることのなかった「言語化」という能力は今後も重要度を増していくことが予想されるので、普段から指定の字数で記述する練習が不可欠です。

また、共通テストの導入にあたって2017年と2018年に実施された試行調査(プレテスト)では、マーク式問題についても変化が見られています。たとえば、これまでよりも実用的な文章が扱われたり、グラフや新聞記事といった複数の資料を関連付けて考えさせたりする問題も出題されました。これらのことから、従来よりも幅広いタイプの問題に触れることが重要と言えるでしょう。

数学

数学の試験問題でも国語同様に記述式の小問が導入される予定です。ただし、数学の場合は「数学Ⅰ・数学A」、「数学Ⅱ・数学B」など全6科目のうち、全てに記述式問題が入るわけではないので内容をよく確認しましょう。

変更点

数学で記述式の問題が導入されるのは「数学Ⅰ」と「数学Ⅰ・数学A」の2科目のみとなる予定です。これにより、試験時間が60分から70分へと拡大されます。数学では、国語のように記述式問題のみを扱う大問が新設されることはなく、マーク式の問題に混在させる形で数式などを記述する3題の小問が出題されるのが特徴です。また、記述による解答が求められるのは数学Ⅰの範囲のみとなります。

評価についても、国語で予定されているような段階評価はなく、記述式の問題を含めて全部で100点満点となるよう採点される予定です。ちなみに「数学Ⅱ・数学B」など、その他の数学の科目は全問マーク式で試験時間も60分のままです。

対策方法

文部科学省が実施した試行調査(プレテスト)によると、数学は問題文がこれまでに比べて長くなり、全体的に「読んで考えさせる」ことを意図した出題が目立ちました。また、問題に対する不慣れさからか、記述式の解答欄が空白のままになっている生徒が多かったことも特徴的です。これらのことから、数学においても従来のようなパターン別の反復演習だけでは太刀打ちできない可能性が高くなってきていることがわかります。

今後は、問題を見てその場で考える力がより一層求められるため、基礎的な知識を身に付けるためのカリキュラムを早めに習得し、情報量の多い問題への対応力を養う時間を確保することが重要となってくるでしょう。理系を選択している生徒にも読解力を求める傾向があることを念頭に置き、複数の情報を照らし合わせて解答を導き出す力を持てたかどうかが高得点への鍵となりそうです。

英語

大学入学共通テストの英語は民間試験の導入予定も含めて最も内容の変化が大きい上に、文系・理系を問わず重要な科目であるため、特に注意が必要です。そこでまずは、民間試験以外の部分についての変更点と対策方法を見ていきましょう。

変更点

英語の試験では、これまで「筆記とリスニング」と呼ばれてきた問題タイプが「リーディングとリスニング」へと名称が変更され、配点もリーディング100点、リスニング100点の同じ比重で合計200点満点となります。センター試験では筆記200点、リスニング50点の配点だったことを考えると、「読む・聞く・話す・書く」という英語の4技能をバランス良く身に付けさせるための施策の一つと言えるでしょう。試験時間はリーディングが80分、リスニングが30分で全問マーク式です。

出題内容も「リーディング」と呼び方が変更されるだけあって、センター試験で扱われていたような文法問題はなくなり、与えられたテキストを読んで解答する形式のみとなります。また、リスニングについては出題数が増え、問題によって2回聞けるものと、1回しか聞けないものに分かれるのが特徴です。

対策方法

大学入学共通テストの英語ではCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA1~B1レベルの問題が扱われることになっています。これは英検に当てはめると3~2級と同程度です。まず、リーディングでは短時間で解答することが可能な文法問題がなくなる分、これまでよりも読解量が増える点が対策をする上で重要なポイントとなります。必要な情報を素早く読み取る練習は欠かせないと言えるでしょう。また、出題されるテキストもWebページや広告といった実用的な素材が多くみられるため、日常生活で活用されている英語にも慣れ親しんでおく必要が出てきます。

さらに、リスニングでも実社会でなされるような自然なコミュニケーションを題材とした問題で、さまざまな話者による英語を聞く機会を持つことが対策として有効です。30分間というリスニングに耐えられるだけの集中力も重要でしょう。

英語の民間試験導入について

2019年11月に当初予定されていた英語の民間試験導入の延期が発表され、大きなニュースとなりました。そこでここでは、改めて英語に民間試験を導入しようとしていたそもそもの背景や延期となった理由について解説します。

民間試験導入の背景

急速に進むグローバル化に伴い英語の4技能を総合的に身に付けた人材育成の重要性が増していますが、現状では「話す・書く」の2技能に課題があると言われています。とはいえ、50万人規模の受験生が一斉に集まる大学入学共通テストで、英語のスピーキングとライティングの能力を評価するのは現実的ではありません。こうした事情を背景に、4技能を評価できる民間の資格や検定試験(GTECや新型英検など)の成績を大学入試で活用しようという話になりました。

具体的には、大学を受験する年度の4~12月に指定のIDを用いて対象となる民間試験を受験し、成績の登録をするというものです(登録は最大2回まで)。たとえば、現役生であれば高校3年生の4~12月に各自で民間試験を受験することになります。民間試験の成績は大学入試センターが管理し、大学側の求めに応じて開示する予定となっていました。なお、民間試験の成績を受験に活用するかどうかは大学側に決定権があります。

民間試験導入が見送られた理由

民間試験の導入が見送られた理由は主に2つ、受験料と地域格差の問題です。民間試験の中には1回の受験料が1万円を超えるものもあり、経済的な負担の大きさが指摘されていました。また、試験の種類によって実施回数や会場数に差があり、居住地域の有利・不利といった状況が生まれるのを是正することができなかったことも延期の大きな要因です。

大学の中には2019年11月の延期が決定するかなり前から、これらの点を問題視し民間試験の成績を受験に活用しない方針を固めていたところもあります。たとえば、岩手県立大学は2018年11月の時点で、東北大学は同年12月の時点で見送りを発表しています。両校とも、制度としての公平性が担保されておらず、受験生にとってプラスとならない点を指摘していました。文部科学省は2024年度に実施する入試から民間試験の導入を新たに行うことを発表していますが、現状の問題点や受験生、教育関係者などの意見を考えると簡単にはいかないかもしれません。

大学入学共通テストにまつわる懸念点

大学入学共通テストの実施にあたっては英語の民間試験以外にもいくつかの課題が残されています。こうした問題は今後、新たな変更を生む可能性もあるため、どのようなことが不安要素とされているのかを把握しておきましょう。

記述式問題の採点

英語の民間試験導入の延期が決定された直後から、国語と数学の記述式問題についても中止や延期を求める声が噴出するようになりました。問題として指摘される原因となっているのは採点者の質と自己採点の正確性という2点です。

国語と数学の記述式問題は教育事業を展開するベネッセコーポレーションの関連会社が担当することになっています。しかし、採点者不足を補うためにアルバイトを雇用することも想定されているため、採点の精度や公平性を懸念する意見が出ているのが現状です。

また、記述式問題が含まれることで受験生自身による自己採点が難しくなるという問題もあります。特に、国公立大学を志望する受験生は自己採点の結果から最終的な出願先を決めることが多いため、混乱は避けられないでしょう。結果として、安全志向の出願傾向になってしまうことも考えられます。文部科学省は今後対策を講じるとしていますが、中止や延期の可能性はゼロではありません。

入試のスケジュール

国公立大学であっても私立大学であっても、大学入学共通テストの結果を入試で活用する場合は大学入試センターからの成績提供を待たなければなりません。記述式問題が導入された場合、採点に時間がかかる分、成績提供のタイミングもセンター試験と比べて数日程度は後ろ倒しになることが想定されています。これにより、大学によっては入試のスケジュール変更を余儀なくされるかもしれません。

たとえば、国公立大学で2段階選抜(いわゆる足切り)を実施している学校では、その発表がセンター試験のときよりも遅くなる可能性があります。また、私立大学では共通テストを利用する入試の合格発表日が後ろへずれ込むでしょう。こうした状況を考慮して、試験日を含めた入試日程そのものを調整する大学が出てきた場合、併願校の組み方も変わってくるので注意が必要です。特に、例年2月10日前後に合格発表日を設定している私立大学にとっては影響が大きくなるでしょう。

大学入学共通テストは常に最新情報の確認を!

大学入学共通テストは試験の方向性は変わっても、センター試験と同等の重要性を持つことに変わりはありません。しかし、民間試験導入の延期に見られるような土壇場の変更は今後もないとは言えない状況が続きます。特に、国語と数学の記述式問題や入試のスケジュールについての情報を確認するときは細心の注意が必要です。信頼できる情報源を日々チェックする習慣を付けて、なるべく早い対応ができるようにしておきましょう。

Print Friendly, PDF & Email

関連記事

Top