相続発生時に困らないために知っておきたい相続税の基本

2017年7月27日
相続発生時に困らないために知っておきたい相続税の基本

すでに相続が発生した人はすぐにでも対応を始める必要がありますし、まだ相続が発生していない人もいざというときに備えて相続の基本を知っておく必要があるでしょう。そこで、相続が発生した場合の手続きや相続税計算の基礎、さらには相続税の節税などについてお伝えします。

相続が発生したらいつまでに何をすればよいか?

いざ相続が発生したらいつまでに何をすればよいのでしょう?すぐにでも対応すべき主なことは3つあります。

1つ目は死亡届の提出です。死亡を知ってから7日以内に亡くなった人の住所地の市区町村に死亡診断書を添えて提出します。(※1)届けることで火葬許可証を受け取ります。これを火葬業者に提出し、火葬後に納骨時に必要となる埋葬許可書を受け取ります。

2つ目は社会保険の手続きです。年金を受け取っている場合は停止手続きが必要です。厚生年金であれば10日以内、国民年金は14日以内に年金手帳や死亡診断書、戸籍謄本などを提出して手続きします。(※1)その他の健康保険などは、市町村や健康保険組合、協会けんぽなどに死亡したことを伝えます。

3つ目は生命保険金の受取りです。保険証券や死亡診断書、被保険者と請求書の戸籍謄本などを用意して保険会社に保険金受取請求を行います。(※1)次に、税金に関する手続きも必要となります。所得税や消費税についても相続人が対応する場合がありますが、主な税金は相続税です。相続税は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に申告することになっています。(※2)

戸籍謄本など提出すべき書類も多くケースによって変わりますので、必要書類については税務署に直接確認をするか税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

相続税計算の基礎

相続税対策を考える場合には、まず相続税の計算方法の基本を理解しておくことが大切です。相続税は死亡した被相続人が遺した財産を引き継いだ人にかかる財産税ですので、それぞれの相続人などがいくらの財産を引き継いだのかを計算します。計算にあたっては、金融資産や不動産などそれぞれの相続財産の評価方法が決められていますのでそれに従います。

次に、財産を引き継いだすべての人の評価額を合計して基礎控除と呼ばれる基本控除額を引きます。基礎控除額は3000万円と法定相続人の数に600万円を乗じたものを合計した額とされています。(※2)相続財産の相続税評価額の合計が基礎控除以内であれば相続税の負担は生じませんし申告も不要です。基礎控除を超えた金額には相続税が課税されます。基礎控除を超える金額を、民法で定められている法定相続分通りに仮に分割したとして各法定相続人の相続税額を算出し合計します。こうしてまず相続税の総額を確定することになっています。

最後はこの相続税総額を、各人が財産を引き継いだ金額に応じて按分し相続税を負担することになっています。相続税の税率は全部で8段階に分かれており、最低は1000万円以下の部分に対する10%、最高は6億円超の部分に対する55%となっています。(※3)つまり、財産が多いケースと少ないケースでは相続税の負担は多い方が重くなるということです。また、財産総額が同じであれば、相続人が多いケースと少ないケースでは、多い方が基礎控除が増えますので相続税の負担は少ないことになります。

相続税の節税方法

相続税の負担が重すぎると、せっかく相続した財産を手放して納税しなければならなくなる可能性もあります。そういった事態を避けるためにも、相続税の節税について代表的な方法を4つ紹介しておきます。

1つ目は生前贈与です。相続発生時の財産を少なくすることで相続税の負担を軽くするのです。注意すべき点は、生前贈与は贈与税の課税対象となることです。贈与税にも年単位の基礎控除がありますのでその範囲内での贈与に抑えれば原則として贈与税負担は生じません。相続時精算課税制度と呼ばれる制度があり、総額で2500万円まで贈与税が非課税となりますが、この制度は生前贈与分を相続財産に加算することになっていますので、単純な生前贈与にはならない点に注意しましょう。(※4)

2つ目は小規模宅地の特例です。居住用・事業用・賃貸事業用の土地を一定の条件を満たして引き継いだ場合は、財産評価上80%または50%の評価減が可能になる制度です。(※5)

3つ目は生命保険金の非課税の活用です。相続税の計算上、死亡保険金はみなし相続財産とされ課税対象ですが、法定相続人の数に500万円を乗じた金額が非課税になります。(※6)

4つ目は法定相続人の数を増やす方法です。一定の制限はありますが養子をとることで法定相続人の数が増え、基礎控除や生命保険金非課税の金額を増加させることができます。

相続に関しては専門家に相談するのがおすすめ

相続に関する制度は複雑で、素人がすべてを把握することは難しいのが実情です。そのため、相続が発生した場合や相続対策をしたい場合は、相続に関する専門家に相談することをおすすめします。主な相続の専門家集団として税理士事務所と法律事務所があげられます。税理士事務所は税理士が、法律事務所は弁護士が運営しています。弁護士は登録をすれば税理士になることもできますし、相続税に詳しい税理士であれば民法の相続に関する一定の知識があるはずです。

また、それぞれの仕業間の連携も行われています。そのためどちらに行ってもある程度の対応をしてもらえるでしょう。しかし一般的には、弁護士は遺産分割や遺言など民法の相続分野を専門としている人が多く、税理士は相続税や関連税制を専門としている人が多いです。そのため、遺産分割や遺言に関しては法律事務所、相続税に関しては税理士事務所に相談することをおすすめします。税理士に相続に関する相談をするメリットとしては、適切な財産評価や税額算定、控除制度の適用、税務調査時の対応などがあげられます。(※7)

相続税対策のために税理士事務所を見つけておく

相続税の基本を理解しておけば、いざ相続が発生しても慌てることなく落ち着いて対処できるようになるはずです。しかし、相続税の節税対策となると専門家の力を借りる必要があるでしょう。相続税の基本を理解したうえで、いざというときに相続税の相談ができる税理士事務所を見つけておきましょう。

※1相続手続・必要書類:
http://www.sozoku-network.jp/category/1789887.html
※2国税庁「No.4152相続税の計算」:
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4152.htm
※3国税庁「No.4155相続税の税率」:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm
※4国税庁「No.4103相続時精算課税の選択」:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4103.htm
※5国税庁「No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例」:
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm
※6No.4114相続税の課税対象になる死亡保険金:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4114.htm
※7相続税申告を税理士に依頼する5つのメリット:
https://www.happy-souzoku.jp/souzoku-1276.html

ライタープロフィール
【hiro】
電器メーカー在職中、経理・財務分野の第一線にて活躍、2001年から5年間、経理・財務責任者として海外子会社へ出向。2009年にファイナンシャルプランナーとして独立し、講師業・執筆業などを中心に幅広い分野で活動している。得意なライティング分野は、金融資産および不動産投資分野、所得税や相続税などの税金分野、ビジネススキルの分野など。講師経験を活かしたわかりやすい文章が特徴。

 

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