人材育成にありがちな失敗例とその解決策とは?

2017年12月21日
人材育成にありがちな失敗例とその解決策とは?

人材育成は中長期的な企業の発展に関わる人事戦略の重要なテーマです。どんなに優秀な人材を採用したとしても、適切な人材育成を実施しなければ、社員の力を十分に発揮させ企業の成長につなげることは難しいでしょう。ここでは、人材育成の現場で考えられる失敗例とその解決策について説明します。

人材育成の種類

人材育成にはさまざまな種類があります。企業が行う研修には、新入社員教育に代表される事業内容や社内ルールなどを説明するもの、マナー研修やリーダー研修など定期的に行われるもの、技術やスキルアップなどのための実践的な研修があります(※1)。研修以外には、OJT、つまり業務を通した現場での人材育成があります。キャリアプラン・目標設定、業績評価、フィードバックも重要な育成機会です。また、自己啓発や資格取得サポート、人事ローテーション、社内公募制度など人事制度の充実も、人材育成にとって効果的な取り組みと考えられるでしょう。

よくある人材育成の失敗例とは

個人のキャリア成長を重視しない企業風土

人材育成がうまくいかないパターンのひとつには、徹底した成果主義の評価制度を導入している組織の例があります。結果のみが評価される企業では、目標達成までのプロセスや個人のキャリアプランが重視されにくい傾向があります。そのため、社員間のナレッジ共有や協力体制が築かれず、組織全体の能力の底上げが行われにくいというリスクがあるでしょう(※2)。

社員自身のキャリア形成につながる研修や施策でなければ、社員がモチベーション高く取り組むことが難しいと考えられます。

責任委譲ができないマネジメント体制

部下の育成に力を入れるあまりに、社員が自分で気づきを得て成長をする機会を奪ってしまうケースもあります。上司が業務の仕方を細かく指示し過ぎる、上司のやり方を押し付ける、代わりに何でもやってしまうなどです。社員が指示待ちばかりの受け身な人材になってしまう、失敗を恐れて新しい挑戦をしないなどの弊害が考えられます。ある程度の責任を与えること、失敗から学びを得るという経験をさせることも社員の成長には欠かせません。

人材育成の成果は管理職の考え方次第

このように、これらの人材育成の失敗の原因には、社員を管理する経営者や管理職の考え方が大きく関わります。上司が「優秀な人材は上司の背中を見て勝手に育つ」と考え、組織的な人材育成に懐疑的なタイプであれば、いくら人事部門が研修制度を充実させたとしても、部下が積極的に参加することは考えにくいでしょう。また、上司と部下の信頼関係が十分に醸成されていない場合には、OJTや人事評価、フィードバックを含めた包括的な人材育成を効果的に行うことは非常に困難です。

効果的な人材育成実施のために

人材育成目的の明確化と効果測定

これらの課題を解決するためには、まず人材育成の目的、研修等の施策の目的を明確にすることが重要です。組織やチーム、個人にどんな課題があるのかを棚卸しし、不足している要素は何か、それを補うために何をすべきかを整理しましょう。企業研修をする場合には、参加者ひとりひとりがその目的を納得することが研修効果アップにつながります(※3)。また、適切な効果測定を行うことで、その目的が達成できたのかを確認し、必要に応じて育成計画の軌道修正を行うことが可能です。

管理職の意識改革

研修を行う場合には、経営者、人事部門、参加者と参加者の上司、外部講師など、関係者間の理解に差異がないように調整する必要があります。経営者が社員に求めることが人事部門に伝わっていない場合や、参加者の上司が研修の意義を理解していない場合などにおいては、その研修の成果が大きく低下する危険性があるためです(※1)。

管理職の理解を得るためには、経営者が強いリーダーシップを発揮し、管理職の意識改革をする必要があるでしょう。また、人事評価制度と育成プランをリンクさせるなどして、社員個人のキャリアプランをサポートする取り組みも重要です。

人材育成を外部企業に相談するメリット

人材育成における組織の課題は、企業によって大きく異なります。規模や業種だけではなく、組織の成熟度や業績、社員の定着度など、さまざまな要素によって適切なアプローチが変わると言えます。そのため、人材育成支援を外部企業に相談するメリットは、人件費の固定化を抑制することにとどまらず、その時々に変化する企業の課題に対して、より専門性の高い知見を活用できるということにあります。

自社のマンパワーのみで人材育成に取り組む場合には、他社との比較を通した客観的な視点を持つことが難しく、社内で特定の人材にノウハウが集中することで離職時のリスクが高まるという恐れもあります。一方で、企業文化醸成のための研修は内製化するなど、研修の目的に応じて外部企業との連携を検討するのもひとつの手と言えます。

社員ひとりひとりに合った育成プランを

人材育成の手法は一辺倒でいいわけではなく、社員の経験や職種、キャリアプランなどさまざまな要素によって異なるものです。人材育成が効果的に行われない組織では、優秀な社員が辞めていくなどのリスクもあります。経営者は人事部門と連携を強め、組織全体に人材育成の必要性を訴えることが大切でしょう。

※1【日本の人事部】「社内研修」の失敗事例と改善のためのポイント
※2【ALL-IN】「組織化」のコツ―人材育成と評価の事例
※3【サイバーユニバーシティ株式会社】よくある失敗パターンから考える、社員研修を成功させる3つのカギ

ライタープロフィール
なつみさん
【なつみ】
外資系企業などの人事として10年以上の経験を活かし、主に人事マネジメント、人材採用、組織活性化の分野で執筆活動中。2009年イギリスで人事マネジメント修士号取得。上場企業の海外子会社管理に従事した後、現在はパリでフリーランスとして執筆、翻訳、日本企業のビジネス支援等を行う。
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