季節の移ろいを感じる和菓子の世界

2016年11月24日

手土産を買うために和菓子屋さんを訪れると、繊細で美しいお菓子に思わずため息が出ます。日本には四季があり、それぞれの季節が巡ってくる度にその時期の和菓子が出回ります。ぜひ知っておきたい季節の和菓子をご紹介します。

春の和菓子

桃の花が咲く頃、3月3日のひな祭りは桃の節句とも呼ばれ、人々は女の子の健やかな成長を願います。ひな壇には「雛あられ」や「ひし餅」を飾ります。ひし餅の色は赤・白・緑の3色ですが、それぞれ「花・雪・草木」を表しているそう。雪が溶けて草木が芽吹き、花が咲く情景が浮かぶようです。春の楽しみの一つが、桜の下でのお花見です。お花見の風習は平安時代に始まったとの謂れがあります。花を愛でる日本人の心は古くから変わりません。この時期には桜をモチーフにした和菓子がたくさん出てきます。中でも有名なのが「桜餅」です。この桜餅、関東では「長命寺」、関西では「道明寺」と呼び方が変わります。地域によって呼び方が変わる和菓子は以外と多くあります。他にも「うぐいす餅」や「イチゴ大福」などが店頭に並びます。端午の節句は男の子の健康と成長を願って「ちまき」や「柏餅」を食べる風習があります。これらは魔除けの食べ物として受け継がれています。柏の葉は新しい葉が出るまで古い葉が落ちないことから、家系が絶えない・子孫繁栄の象徴とされ柏餅に使用されています。また鯉のぼりや兜を型どったお菓子も喜ばれます。

夏の和菓子

初夏の6月は鮎釣りが解禁になる時期です。鮎を型どった「若鮎」をご存知ですか?鮎の形をしたカステラ生地に求肥や餡子を包んだ和菓子です。見た目が可愛らしいので、小さい子どもさんにも喜ばれそうです。京都の夏に欠かせない和菓子が「水無月」です。これは白いういろう生地の上に小豆をのせたもので、三角形に切り分けてあります。室町時代の宮中では、氷を使った暑気払いの行事が行われていましたが、庶民には氷が大変貴重で手が届かないものだったため、氷に似せて和菓子を作り食べたことが由来とされています。夏も盛りになってくると、水もの菓子と呼ばれる水羊羹やゼリー・葛や寒天などを使った見た目にも涼やかな冷たいお菓子が人気があります。透明なゼリーの中に金魚が泳いでいるお菓子は可愛らしくて食べるのが勿体無いほどです。

秋の和菓子

日本では平安時代から観月の宴が開かれ、人々は遠い月に思いを馳せていました。旧暦の8月15日(現在の9月)は「十五夜」または「中秋の名月」と呼ばれ、里芋の収穫時期でもあったことから「芋名月」の別名も持っています。お月見といえばお団子ですね。関東では月を型どった小さい団子を山のように積み重ねますが、関西では餡で包んだ団子を里芋に見立てています。また旧暦の9月13日(現在の10月)にあたる「十三夜」は別名「栗名月」「豆名月」といいます。栗や芋が美味しい時期で、「栗きんとん」や「栗蒸し羊羮」などが出回ります。晩秋には猪に似せた「亥の子餅」を食べる風習があります。亥の月(旧暦の10月)亥の日亥の刻(午後10時頃)に餅を食べると病気をしないと人々は信じてきました。また猪は多産なので、子孫繁栄の願いも込められています。
秋のお彼岸には「おはぎ」を作る家庭も多くあります。

冬の和菓子

冬至には柚子湯に入ったり、名前に「ん」の付くものを食べると「運」が良くなるとの言い伝えからかぼちゃ(なんきん)を食べる風習があります。香りのいい「柚子羊羮」「柚子餅」や「かぼちゃ大福」などの和菓子が美味しい季節です。お正月に食べられるのが「干支菓子」です。毎年の干支をモチーフにした様々な和菓子が出回ります。縁起物で可愛らしいので、新年の挨拶回りに持参すると喜ばれますよ。また新年にはおせちと一緒に「花びら餅」を食べる習慣があります。寒い体を温めてくれるお汁粉やぜんざいが美味しい季節です。立春の前日にあたる節分は、季節の変わり目を告げる日です。豆まきをして鬼(災いや病気)を外へ追い出しましょう。お多福や鬼を型どった和菓子、種類豊富な豆菓子で節分を祝います。可愛らしい「雪うさぎ」や、椿の葉の間に道明寺餅を挟んだ「椿もち」は寒い季節の楽しみです。

一年を通して日本には四季の和菓子がたくさんあります。季節の移ろいを楽しむ日本人の心の表れですね。普段は洋菓子ばかりという人も、時には和菓子を通して季節を感じてみてはいかがですか?

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