相続税対策に活用したい!生前贈与の方法

2018年1月24日

たくさんの資産を持っている人にとって、避けて通れないのが「相続税」です。相続税を安くするために「生前贈与」の利用を考えている人も多いでしょう。しかし、注意しないと税務署から指摘を受けて、高い贈与税がかかってしまうこともあります。生前贈与はどのように行ったらよいのでしょうか。

110万円の基礎控除を使う

生前贈与とは、将来相続税の対象になる相続財産を、前もって相続人(子など)に贈与することです。相続財産を贈与して減らしておくと、相続の際に相続税の節税ができます。しかし、むやみに贈与すると相続税より税率が高い贈与税がかかってしまいます。ですから、できるだけ贈与税の負担を少なくして贈与することが大切です。

贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。毎年110万円以下の金額であれば、贈与税を払わずに贈与ができるのです。お金は手渡しでも構わないのですが、後から税務署の指定を受けたときに贈与の証拠になるように、銀行振り込みで贈与する方が良いでしょう。

しかし、贈与は贈与する側と贈与される側の合意が必要です。贈与された側が、贈与されたという認識を持っていなければなりません。毎年、贈与契約書を作り、通帳・印鑑などを贈与された人が自由に使える状態になっていなければ、単に預金の名義を変えただけ(名義預金)と判断されてしまいます。

相続が発生してしまうと、3年以内の贈与は相続財産の中に含めて計算されてしまいます。ですから、相続が起きそうなときに慌てて贈与するのではなく、計画的に実行することが重要です。

あえて贈与税を払っておく

基礎控除の110万円を毎年贈与し続けると、税金逃れをしていると見なされることもあります。ですから、あえて110万円以上を贈与して、少額の贈与税を納めておくという方法もあります。たとえば、111万円を贈与し、基礎控除を超えた1万円について申告し、贈与税を納めるのです。贈与税の基礎控除を超えた額に贈与税がかかり、200万円以下ならば10%の税率ですから、111万円を贈与した時の贈与税は、1万円の10%の1,000円という計算になります。

資産が数億もあるような資産家の場合、もっと多額に贈与して贈与税を納めても、最終的には相続税を払うより安くなることもあります。

ただし、親が勝手に子に贈与し自分で申告書を作って提出した場合などは、贈与とは認められず名義預金と認定されてしまいますので、注意しなくてはなりません。

相続時精算課税制度を利用する

相続時精算課税制度とは、60歳以上の祖父母・親から20歳以上の子・孫へ贈与する場合は、2500万円まで非課税になるという制度です。資産の活用を図り、経済を循環させるために設けられています。2500万円を超えた分には20%の贈与税がかかります。ただし、これを使って贈与されたものは、相続が行われるときには相続財産として計算されますから、贈与税は非課税でも、あとで相続税がかかってくる可能性は残ります。

それでも、早い時期に一度に多額の財産を子や孫に渡せるというメリットがあります。マンションやアパートなどの収益を生む不動産を贈与された場合、その収益は贈与された人のものになりますので、贈与された人にとっては、よりたくさんの財産を手に入れたのと同じことになります。その後資産の価値が上がっても、贈与されたときの価値で計算されますから、後に相続税の対象となったときに有利になる場合もあるでしょう。

しかし、一度この制度を利用すると、それから後は年間110万円の基礎控除枠を使った贈与ができなくなります。さらに、孫に相続時精算課税制度を利用して贈与をすると、相続税の計算の際に、孫は法定相続人ではないので相続税が2割加算されてしまいます。

この制度は相続税の対策にはならないわけですから、資産全体を総合的に考えて、利用するかどうか検討する必要があるでしょう。

その他にもある生前贈与の方法

子や孫が住む住宅の購入資金を3000万円まで援助しても、贈与税は非課税となる制度が「住宅取得資金贈与の特例」です。

「夫婦間贈与の特例」もあります。20年以上の婚姻期間のある夫婦間では、住居用不動産を購入するために2000万円まで贈与しても贈与税はかかりません。このとき、贈与を受けた翌年の3月15日までに、その不動産に居住していなくてはなりません。

30歳未満の子や孫の教育資金の贈与を、1500万円まで非課税にする特例が「教育資金贈与の特例」です。信託銀行などが扱う教育資金贈与信託を利用して一括で贈与します。もっとも、教育費などが必要な時にその都度祖父母や親が負担するのは、特例を利用しなくても非課税ですから、本当に贈与が必要かどうかを見極めておきたいものです。相続税を心配するあまり必要以上に贈与したせいで、長生きした祖父母や親の老後資金が不足してしまうという事態は避けるようにしましょう。

贈与税の時効とは?

贈与税には時効があります。気づかずに贈与していて申告を忘れていた場合は6年ですが、意図的に申告しなかった場合は7年です。気づかずに贈与するということはあまり考えられないですから、贈与税の時効は7年と思ってよいでしょう。そのため7年経つと、こっそり贈与していても贈与税はかからないと思う人がいますが、贈与契約書もない状態では、贈与とは見なされません。

税務署は相続が発生したときに資金の移動に気づき、税務調査に入って指摘してきます。その時、税務署にいくら贈与を受けていたと主張しても、名義預金と判断されて、相続税の対象になってしまうことが多いのです。確実に贈与と認められるためには、贈与契約書を作りきちんと贈与税の申告をしておくことです。

賢く生前贈与を行おう

生前贈与を上手く活用することで、相続税の負担を減らせます。その際は、生前贈与で渡した財産が贈与の課税対象になってしまわないように、また、贈与と認められずに相続財産に含まれてしまわないように、しっかり注意することが大事です。

▼参考サイト
※1.【税理士法人チェスター】相続税がゼロ円に!税理士が厳選する17の相続税対策完全ガイド

Print Friendly, PDF & Email

関連記事

Top