相続税対策に!生前贈与について考えてみよう

2018年1月28日
相続税対策に!生前贈与について考えてみよう

テレビニュースや新聞などで度々見聞きする「生前贈与」ですが、生前贈与の目的や注意点をしっかりと理解したうえで贈与を行うと、節税にもつながるといわれています。この記事では、相続税と贈与税の違い、さらに相続税対策として効果的な生前贈与の方法などについて解説していきます。

そもそも生前贈与とは

生前贈与とは、生きている間に財産を個人から別の個人へと譲ることをいいます。この生前贈与の多くは、子どもや孫などの親族間で行われています。(※1)

生前贈与を行う目的の一つとして、将来相続人になるであろう人物が相続税の負担を軽減することが挙げられます。ただしこの場合、相続税は減ることになりますが、贈与税がかかってきます。そのため、生前贈与を考えているのであれば注意点をよく把握しておき、節税につなげることが大切なのです。(※2)

違いを確認!相続税と贈与税

しばし混同されがちな「相続税」と「贈与税」ですが、これらには明確な違いがあります。賢く節税したいなら、相続税・贈与税の違いについて知っておきましょう。まず、「相続税」については、被相続人が亡くなり相続が発生したとき、遺産を相続する人が支払わなければならない税金のことをいいます。また、遺言や死因贈与契約によって、相続人ではない人が財産を相続する場合があります。このような場合でも、相続税の対象となることを知っておきましょう。(※3)

一方の贈与税は、受贈者が個人から財産を無償であげることを双方が了解したうえで成立するものです。会社などの法人から財産を譲り受けたときに贈与税はかかりません。しかし、個人からの贈与で生じた財産のときには贈与税が課されるのです。相続税と贈与税の違いがわかったところで注意しておきたいのが、生命保険金の受け取りに関するケースです。例えば、自分が保険料の負担をしていない生命保険金を受け取ったとします。このケースについては、贈与を受け取ったものとみなされ、贈与税が課されることとなります。

次に、死亡した人が自分を被保険者として保険料を負担していた場合ですが、このケースでは状況が全く変わってきます。このケースで生命保険金を受け取った場合については、相続税の対象となるのです。(※4)生前贈与を行うために生命保険を活用すると、計画的に節税をすることができる可能性があるといえるでしょう。

贈与税の非課税枠の利用

相続税対策として、贈与税の非課税枠を利用して節税につなげましょう。生前贈与を非課税枠で行うための方法としては、いくつかの方法があります。まず、生前贈与の場合は、贈与税の対象となるのは110万円以上の贈与を行った場合です。贈与税には年間110万円の基礎控除があります。この基礎控除には、贈与者と受贈者の制限がないため、便利な制度といえるでしょう。(※5)

次に、相続時精算課税制度を利用することでも相続税対策は可能です。この制度では、60歳以上の贈与者(親や祖父母)から20歳以上の受贈者(子や孫)への贈与は累計2,500万円まで非課税枠となるのです。贈与者と受贈者の条件に当てはまるのであれば、この制度も検討してみることをおすすめします。続いて、教育資金の贈与の特例についても知っておきましょう。子どもや孫が30歳未満の場合には、教育資金の贈与は1,500万円を限度として非課税となる特例があります。

ただし、この特例は平成31年3月31日までとされていることを確認しておきましょう。(※6)生前贈与を非課税で行う方法は他にもあります。そのため、「自分に合った方法はどれか」「どの控除を活用して生前贈与を行うのがベストな選択か」などということをしっかりと考えたうえで、贈与の方法を決定しましょう。

相続税の計算方法とは

相続税の改正に伴い、平成27年1月1日以降の相続について基礎控除額が縮小され、税率等が変更されました。これにより、相続税の税額を計算する必要が生じたという人が増えたといわれています。

まず、基礎控除額を計算して、税金のかからない範囲を把握しておくことがポイントです。基礎控除額の計算は簡単で、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出されます。このとき、正味の遺産額が基礎控除額以下の場合には、相続税はかからないので覚えておきましょう。正味の遺産額については、土地・建物や預貯金などのプラスの財産から、借入金や未払い金などのマイナスの財産を差し引いたもののことをいいます。しかし、正味の遺産が基本控除額を超える場合については、相続税を納税する義務が発生するのです。(※7)

相続税の税額の計算方法について、各相続人が相続などで実際に取得した財産に直接税率をかけたものと思っている人がいますが、これは間違いです。相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた残りの額を、各相続人の相続分により按分した額に、民法で定められた相続税の税率をかけると相続税額が算出されます。(※8)そのため、実際の相続割合が異なる場合に関しては、計算時にも注意が必要といえるでしょう。

知らなかったでは済まされない!相続税の時効とは

「相続税を節税したい」と考える人のなかには、「相続税にも時効があるのでは?」と思う人もいるのではないでしょうか。結論から述べると、相続税にも時効はあります。相続税の時効については、相続が発生してから5~7年間といわれており、この期間が過ぎてしまうと相続税の申告および納付はしなくても良いとされています。ただし、相続税が5年で時効となるのは「相続税の申告や納付は必要ない」と思っていた「善意の相続人」のみです。

一方で、相続税の申告義務が生じることを知っているにも関わらず放っておいた相続人は「悪意の相続人」といわれ、相続税の時効は7年とされます。ここで、「知らなかったふりをして、相続税は払わないでおこう」と思った人は要注意です。相続税の申告を時効で逃げ切ろうとするのは、ほとんど不可能といえるでしょう。

相続税を期限内に納付しなかった場合にはペナルティがあります。相続税対策として行われることが多い生前贈与ですが、その目的や意図をよく認識したうえで、必要に応じて期限内にきちんと相続税を納付することが大切です。(※9)

▼参考サイト
※1.【All About】生前贈与とは?知っておきたい活用方法と注意点
※2.【遺産相続の困りごと解決なび】「生前贈与」の上手な活用方法
※3.【誰でもわかる相続ガイド】相続税とは何か
※4.【国税庁】No.4402 贈与税がかかる場合
※5.【生前贈与による贈与税・相続税対策ガイド】110万円の基礎控除による生前贈与
※6.【国税庁】No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
※7.【東京税理士会】相続税の計算方法
※8.【中野相続手続センター】相続税の税額の計算方法
※9.【誰でもわかる相続ガイド】相続税の時効について(5段落目は段落全体で参考)

ライタープロフィール
kyuu
【kyuu】
パン・ケーキ作りが好きなことから、教室講師・カフェ経営の経験あり。家族の食を守りたいという思いから、フードアドバイザーの資格も取得。
現在は2児の子育てをしながら、ライター業に従事している。子育ての経験が活かせる教育関係の記事のほか、料理や健康に関する案件が得意分野。
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